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石田 博/ISHIDA Hiroshi
Sommelier's Note~ソムリエのネタ帳

1969年東京出身。90年ホテルニューオータニ入社。尊敬する先輩に憧れ、ソムリエを志す。94年よりレストラン ラ・トゥール・ダルジャン配属、フランス伝統の料理とサービスを学び、ソムリエとしてのキャリアをスタート。2000年、第10回世界最優秀ソムリエコンクールでは第3位になるなど数々の賞を受賞し、日本でも屈指のソムリエとなる。04年ベージュ アラン・デュカス 東京へ移籍、2008年より同社総支配人就任。2011年2月よりレストラン アイ(神宮前)のシェフソムリエとして勤めるかたわら、ホテル日航東京(台場)、同豊橋(愛知)の顧問も務める。講演、執筆、コンサルティング、教育活動など幅広く活動する


月別アーカイブ: 8月 2014

塩尻ワインのポテンシャル

甲州ぶどうによる白ワインが世界的なアワードを獲ったことで沸き立つ山梨と、日本ワインの双璧のなすのが長野県です。大手メーカーがひしめく山梨に量は及びませんが、品質においては引けをとりません。

以前も取り上げましたが、塩尻は茅野・蓼科と松本の間にあるワイン産地で、桔梗原という、これもまた国際的に知られるぶどう畑があるエリアです。

地図をみると分かるのですが、日本列島のちょうど真ん中に位置します。海(太平洋、日本海)から運ばれてくる塩の終着地、ということで、塩の尻、という名がついたと言われています。

今回は、志学館高校に行ってきました。なんと、高校でワインを作っているのです。昭和18年から造っており、戦時中に兵器として、ワインの生産過程で採取できる酒石酸カリウムが目当ての軍隊からの要請だったそうです。

開校100年以上の歴史を感じます

校舎中庭です。

ブドウ栽培から醸造、瓶詰めまで、すべて生徒が行っています。職業学校ということではなく、2年生からとる実習講座の一つに「ワイン醸造」があり、それを専攻した30名ほどの生徒たちが先生の指導のもと、ワインを一度も利き酒することもなく(あたり前ですが)、ワインを造っているのです。

年4000本ほど造られるそのワインは、文化祭のときだけ、「販売実習」として、買うことができます。もちろん儲けることはできません。しかし、それが大変な評判で、毎年1時間で販売予定数の2000本が完売するというのです!

この配置で2000本を売りさばくのです。

その限られた機会を逃すと入手はできない、そういった意味では幻のワイン、ですね。

さて、その人気ぶり。どんなノウハウがあるのか?!

ぶどう畑には、この土地のスペシャリティのメルローとナイヤガラが主に植えらています。

10アールという小さなブドウ畑。

「畑は区画毎に分担しています。放課後、マメに来て、手入れをしている子もいれば、そうでない子もいます。夏休みも来ていた子もいたなあ」と、のどかな風景にとけ込むようなやり取りを畑でしてから、醸造所へ。

ブドウの出来が評価となります。

夏休み明け早々、みんなで手入れしたそうです。

さぞ立派な施設が、、、と思いきや、まさしく普通の学校。他の実習室となんら変わりはありません。

極めて質素な醸造所(実習室)

「発酵の温度がどうやってコントロールするのですか?」と聞くと、

「生徒が毎日撹拌してます」

冷房のきいた部屋には樽が瓶詰めをした前年以前のワインが収納されています。ここが熟成庫になるわけです。

専門的な技術を体得しているようです。

毎年、4樽だけのメルロー。

テイスティング。

メルロー 2012は、日本のメルローによく感じられる独特のメントール系の香り、しかし果実香は充実しています。

メルロー2011は、濃縮感が素晴らしく、タンニンが際立ちます。青々しさはまったく感じられません。

そして、メルロー2009。驚愕でした。カカオやスモークの香り(新樽など使ってません。というか高くて買えないそうです)、味わいはなめらかで、ジューシー。カシスの風味が、厚みのあるボディの広がりと共に沸き上がってきます。ブラインドテイスティングで、「日本」と答えられる人はまずいないのではないかと思ってしまうほどの品質です。

このようなワインを、授業の合間に造ってしまう学生たち。彼は3年生になると、ナパヴァレーに研修旅行にゆきます。まさに英才教育。

彼らが日本ワイナリーの指揮をとるときには、「フランスやカリフォルニアには遠くおよばない」といった感覚はまったくもたないのかもしれませんね。

毎回、長野県原産地呼称を獲得しています

 


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