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石田 博/ISHIDA Hiroshi
Sommelier's Note~ソムリエのネタ帳

1969年東京出身。90年ホテルニューオータニ入社。尊敬する先輩に憧れ、ソムリエを志す。94年よりレストラン ラ・トゥール・ダルジャン配属、フランス伝統の料理とサービスを学び、ソムリエとしてのキャリアをスタート。2000年、第10回世界最優秀ソムリエコンクールでは第3位になるなど数々の賞を受賞し、日本でも屈指のソムリエとなる。04年ベージュ アラン・デュカス 東京へ移籍、2008年より同社総支配人就任。2011年2月よりレストラン アイ(神宮前)のシェフソムリエとして勤めるかたわら、ホテル日航東京(台場)、同豊橋(愛知)の顧問も務める。講演、執筆、コンサルティング、教育活動など幅広く活動する


月別アーカイブ: 8月 2013

今昔、ワインの楽しみ方

ワインが広まったのは、キリストの起源に端を発しています。「パンは我が肉となり、ワインは血となる」という言葉はきいたことがある方も多いでしょう。

儀式には欠かせない飲物として、キリスト教の布教とともに広まっていったのです。その頃、ワインは神聖な酒であり、「ありがたや」と人は味わっていたのでしょう。

 

その後ワインが飛躍的に進歩するのは、中世、修道院が力を持っていた時代です。巡礼などの訪問者に振る舞うためです。

その頃から、「よいワインが生まれる特別な畑」を修道士たちは認識を始めます。ブルゴーニュのグランクリュ(特級)の始まりです。

もちろん訪問者すべてに上質なものが振る舞われたわけではなく、修道士たちは、その特別な畑のものを石垣で囲って、法王など重要な賓客用として区別していました。

クロ・ドゥ・ヴージョ、クロ・ドゥ・ベーズなどブルゴーニュで「クロ」と名前についたものがそうです。

ワインを「うまい」と楽しみ始めたのは、この頃なのかもしれませんね。

 

ワインは長いこと樽で流通していました。18世紀からガラスボトルも出回りましたが、1900年代中頃まではレストランには依然として樽でワインは入荷していていたそうです。

つまり、ボトルに入ったワインというのは稀少なものだったわけです。その頃は当然樽(200-300リットル)が容量の単位だったわけで、カラフェに移して、テーブルに運ばれていたわけですから、ワインにそれほど種類はなく、1種のワインをずっと楽しんでいたことでしょう。

カラフェワインは楽しむというよりも、食卓には欠かせないもの、また酔うためのものだったとも想像できます。

 

 

 

 

 

 

 

ボトルワインが稀少だった名残りは現在でもみることができます。フランスの古いビストロやカフェの店先に、「瓶詰めワインあります」と記されていることがあります。

私も初めてみたときは「なんでそんな普通のことを、これ見よがしにアピールするんだろう?」と不思議に思ったものでした。

ボトルワインが普及すると同時にワインはヴァラエティが豊かになってゆきます。店先には「原産地呼称ワインあります」となるわけです。

フランスの人でも、ワインの産地を意識するようになったのはそれほど前からでもなかったのです。いずれにせよ、「ボルドーはやはりいいな」、「サンセールが好みだ」など薀蓄を肴に味わうようになったわけです。

 

バイザグラスはその名の通り、英語圏つまりアメリカで生まれたワインの楽しみ方です。今となっては当たり前のことですが、本場フランスにはなかったものです。「ボトルを開ける」は特別なことであり、もてなす、分かち合うの象徴でしたから。

このバイザグラスにより、さらにヴァラエティが豊富になります。一回の食事で3-6種類と楽しむことができるのですから。味わうと同時に、テイスティングする、比べるという楽しみ方へと返還していったわけです。

 

現在では、そのバイザグラスサービスを進化させたエノマティックカーブと呼ばれる、システムでワインの状態を保ちつつ、バイザグラスで楽しめるというディスペンサーを設備したワインショップやワインラウンジも登場しています。「バイザグラスはワインの状態が心配だ」というデメリットを解消したわけです。これによって、グランヴァンとよばれる高価なワインでさえもバイザグラスで楽しめるようになったのです。

樽から、ボトルへ、ボトルからグラスへ、それに伴い、聖なる酒から振る舞うための酒に、酔うためのものから味わい、そしてテイスティングへと、ワインの発展とともに、その楽しみ方も発展してきたのですね。

 


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