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石田 博/ISHIDA Hiroshi
Sommelier's Note~ソムリエのネタ帳

1969年東京出身。90年ホテルニューオータニ入社。尊敬する先輩に憧れ、ソムリエを志す。94年よりレストラン ラ・トゥール・ダルジャン配属、フランス伝統の料理とサービスを学び、ソムリエとしてのキャリアをスタート。2000年、第10回世界最優秀ソムリエコンクールでは第3位になるなど数々の賞を受賞し、日本でも屈指のソムリエとなる。04年ベージュ アラン・デュカス 東京へ移籍、2008年より同社総支配人就任。2011年2月よりレストラン アイ(神宮前)のシェフソムリエとして勤めるかたわら、ホテル日航東京(台場)、同豊橋(愛知)の顧問も務める。講演、執筆、コンサルティング、教育活動など幅広く活動する


月別アーカイブ: 3月 2013

日本ワイン

 

 

 

 

 

 

 

 

近年、目覚しい品質向上を果たし、ブームと呼べるほどに

人気が高まっている日本ワイン。

かつてはお土産用として品質は二の次の感もあり、

レストランで取り上げられることはほとんどありませんでした。

駆け出しの頃、先輩に「例えばオーストラリアのソムリエであれば、

ワインリストの1ページ目にはオーストラリアワインが並ぶ、

日本人なら日本ワインを1ページ目に載せるべきなんだ」

と教わりました。

しかし、取り揃えようにも扱っている仲卸さんがほとんどなかったのです。

「日本ワインの父」 高野正誠と土屋竜憲

 

日本のワイン造りの歴史は19世紀末(明治初期)まで遡ります。

山梨や長野で本格的なワイナリーが創立されたのも100年以上も前のことで、

今でも日本ワインを牽引しています。

 

 

 

 

日本ワインといえば、やはり山梨、特に勝沼には世界的水準のワインを

産出するワイナリーがひしめいています。

甲州ブドウは独特の風味をもつワインをつくる日本土着の品種で、

世界のソムリエも注目しています。

シャルドネやカベルネ・ソーヴィニヨンによる高品質なワインも造られており、

国際コンクールでも高い評価を勝ち取っています。

長野県央 塩尻

お隣り長野県では、素晴らしいメルローが生まれます。

長野、特に塩尻は理想的な気候風土をもっています。

以前、勝沼のある造り手の方から、

「メルローはどうも上手くいかない、手をかけてるのにねぇ。長野では、自然に作ってるのに、いいのができてるんだよねぇ」
と、聞いたことがあります。

長野県のほぼ中央に、そのメルローの名産地 塩尻は位置します。

日本地図でみると本州のちようど中央でもあります。

日本アルプスほか山々でぐるりと囲まれた盆地となっていて、

標高700m(高いです)のその地形から、太陽が登ると気温が上がり、

沈むと冷たい空気がたまり、気温がぐっと下がります。

この昼夜の温度差が、ワインにバランスのよさ、きめ細かさを与えるのです。

水はけのよい土壌というのも、ワイン用ブドウの栽培には適しています。

特に赤ワイン用のブドウは粒が小さいほうがよいからです。

山々に囲まれた畑

垣根仕立ての畑

伝統の棚仕立ても。

 

 

 

 

 

 

 

そんな塩尻のメルローは、素晴らしい凝縮感をもちながら、

滑らかで、きめ細かな渋みをもった、大変魅力的な味わいを持ちます。

ヨーロッパ系のブドウ品種ではないのですが、ナイアガラというアロマティックなブドウも名産です。

これは甘口ワインに向いていて、毎年安定した品質のものがでています。

もちろんシャルドネやカベルネもよいものがあります。

塩尻の名声を高めたのは、高台の段丘にある桔梗が原から生まれるメルローです。

世界的に大変評価が高く、ボルドーの特級ワインを凌ぐといっても

決して言いすぎではないでしょう。

いわば日本ワインのグランクリュ(特級畑)です。

しかし、桔梗が原にはその名声を手放しで喜べない事情があります。

畑がどんどん減っているのです。

 

世界のワイン産地では知名度の上がった産地は拡張傾向となるのに、逆なんです。

農家の高齢化が原因の一つです。

主人がブドウ畑で倒れて亡くなる、

夫人は愛着のある畑を人には譲りたくない、

また丹精込めて育てたブドウが枯れて、

荒れ果てる姿をみたくない、

でもどうしようもない。

結果、ブドウ樹を切ってしまう。

売りに出されても、ブドウ畑としては存続しないという残念なことが続いているのです。

 

銘醸産地の駅に降り立ち、しばらく行くと、ブドウ畑が一面に雄大に広がります。

しかし桔梗が原では、畑はコンクリートに埋もれるように点在している、やはり残念です。

ワイン産地の素晴らしい点は、世界中の人がそこから生まれるワインに惹かれて、

やって来てくれることです。

世界に誇るメルローが生まれる桔梗が原もそんな旅人を魅了する土地であってほしい。

私たちにできるのは、

注目し、取り上げ、味わう、ことぐらいですが、

大切なことだとも思うのです。

五一ワインの林さん

信濃ワインの塩原さん

 


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