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石田 博/ISHIDA Hiroshi
Sommelier's Note~ソムリエのネタ帳

1969年東京出身。90年ホテルニューオータニ入社。尊敬する先輩に憧れ、ソムリエを志す。94年よりレストラン ラ・トゥール・ダルジャン配属、フランス伝統の料理とサービスを学び、ソムリエとしてのキャリアをスタート。2000年、第10回世界最優秀ソムリエコンクールでは第3位になるなど数々の賞を受賞し、日本でも屈指のソムリエとなる。04年ベージュ アラン・デュカス 東京へ移籍、2008年より同社総支配人就任。2011年2月よりレストラン アイ(神宮前)のシェフソムリエとして勤めるかたわら、ホテル日航東京(台場)、同豊橋(愛知)の顧問も務める。講演、執筆、コンサルティング、教育活動など幅広く活動する


月別アーカイブ: 10月 2012

ボージョレ

ボージョレほど、その産地に行ったことのある人と、ない人との認識が

かけ離れているワインはないでしょう。

ボージョレといえば、ヌーボーで知られています。

いや、ヌーボーしかないという認識すら否めません。
コンビニでも早々に予約販売が行われ、解禁日には到着の飛行機までTV中継され、

カウントダウン・パーティーが催される。
これほどの盛り上がりをみせる国も日本くらい、

本国フランスを凌いでいるといっても過言ではないでしょう。

「今年のヌーボーどうでした?」と私も毎年聞かれますよ。
ワイン消費が年間一人当たり4リットルにも満たない

日本ですが、ボージョレ・ヌーボーの20%は日本に輸入されています。
「今年のボージョレは?」は11月のちょっとした合言葉のようです。

報道も大変大袈裟です。

毎年、「今年は10年に一度の出来栄え」、「50年に一度」、

「世紀のヴィンテージ」と大絶賛のコメントが飛び交います。

さて、2012年は、「何年一度の出来」になるのでしょうか?

ヌーボーとはなんでしょう?

 

フランスではプリムールと呼ばれます。

「初物、出始め、走り、新酒」がその意味ですから、

ここを間違って覚えられている方はいないと思います。

このプリムール、フランス全ワイン地方に存在します。

ワイン業界の人間とっては、「試飲サンプル」と訳すのが一番適当です。

ワインが樽に仕込まれた段階で、その年の個性や品質をチェックし、

第一次の評価をし、最初の値付けの判断を行うためのものです。

つまり、その後瓶詰めされ、ある程度の熟成を経たワインが

どのような発展を遂げ、価格で取引されるのが適正かを判断する、

そんなワインの将来を占うために行われる試飲サンプルなのです。

ボージョレでも、元々はそんな意味合いでプリムール試飲を行っていました。

それが人気を集めるようになり、生産者たちは試飲日を競って早めるようになり、

収集をつけるために、解禁日を設けることになりました。

それが11月第三木曜日です。

◇         ◇         ◇

ボージョレ地方は「美食の街」リヨンから広がるワイン産地で、

大変優美な景色と可愛らしい街並みを包むようにブドウ畑が広がる、大変魅力的なところです。
のどかで魅力的なボージョレの風景
ボージョレの赤ワイン(ボージョレは白ワインもあるのです)を造るブドウ

ガメイはイチゴのようなチャーミングな果実味の、軽快な飲み口の味わいを特徴としています。

ヌーボーよりも、より豊かで、きめ細やかさがあります。

さらにクリュボージョレと呼ばれる区画は特別な土壌となっており、

それらの畑から生まれる赤ワインは、より深みがあり、芳醇で、

渋みもはっきりと感じられ、熟成すると、ブルゴーニュの銘醸ワインと見間違うほどです。

リヨンは豚肉料理が大変有名で、味わい豊かなシャルキュトリー(豚肉惣菜)や

郷土料理を得意とする、雰囲気たっぷりのレストランが旧市街に軒を連ねています。

そんな料理とPOT(ポ)と呼ばれるリヨン風の細長いガラスのカラフェに入れられたボージョレは格

別の食事を演出してくれます。

 

 

 

 

 

 

 

話をボージョレ・ヌーボーに戻しますね。「帝王」と異名をとるメガワイナリー、

ジョルジュ・デュブッフのお膝元、小さな町 ロマネッシュ・トランは、

11月第三木曜日は大騒ぎです。町の小さな駅にパリからのTGVまでが直行で駆け付け、

その年の収穫を祝います。

我々日本人も、初物、祭りは大好きな国民です。

ボージョレはヌーボーしか知らない人も、一年に一度しかワインを飲まない人も、

「ヌーボーなんてワインじゃない」とうそぶく人も、一緒に乾杯しましょう。

 


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